Interview

「建材」にフォーカスをし、
ゴールまで突き進む。

株式会社トラス 創業メンバー

久保田・沖村

  • 久保田

    大学院で建築史を研究後、総合商社に入社し中国やヨーロッパの水関連の事業投資に携わる。大学院での研究時から興味を持っていた建材に着目し起業。

  • 沖村

    大学院修了後、設計事務所に就職し、約6年間設計に携わる。独立を考えていた時に大学院の同級生だった代表の久保田氏と再会。事業のアイデアを聞き、新しい仕組みをつくっていける点に魅力を感じ、株式会社トラスの創業に参加。

建物の「建材」にフォーカスをし、人生を賭ける

なぜ起業をしたのかを教えてください。

久保田:僕は元々総合商社にいて、中国、ヨーロッパ、中東などを飛び回って仕事をこなしていました。当時の自分にとっては興味があり充実した仕事をさせてもらっていました。全体的に楽しく仕事させてもらっていたのですが、楽しさを感じるポイントのなかに様々な土地に行って、世界の各地で根を張って活動をしている人たちが積み重ねた文化や、作ったものに触れることがあって、その部分が結構大きいことに気がつきました。それを作り上げてきた人たちへの尊敬が大きくなってきて、自分もそういう立場になりたい、と思ったのが始まりですね。30歳になった頃です。
前職だと、案件やジョブローテーションによって各地を転々とすることになるのですが、それではその場所の魅力を作ったり、貢献することは難しいと感じました。腰を据え、長い時間をかけて同じ場所でコミットし、「自分がこの場所に貢献したんだ」と実感できる仕事をすることが自分の人生にとって大事だなと確信しました。どの分野、領域で自分の人生を賭けようかと考えていた中、やはり自分が自然に考えるのは学生時代に学んだ建築関係のことが多かったんですよね。
その頃、仕事でヨーロッパを担当することになりました。ヨーロッパの街並みは美しく整って見えたんですが、よく見ると大体同じ材料が使われていて、それによって綺麗に見えるんじゃないか、とふと思いました。その視点を持ちながら日本に戻ってくると建物で使われている建材がバラバラで、作っている人もたくさんいて、種類も沢山ある。そしてこれは選ぶのが大変だ、と思ったんですね。
どうやって選んでいるのかと思い、帰国した際に当時設計士で大学の同級生だった沖村を訪ねました。

沖村: 建築の意匠設計を大学と大学院で勉強して、そこで影響を受けた考え方の一つが「建築は形式を扱うこと」という考え方でした。時代の環境、技術に合わせて形式が生み出され人間活動を支える。環境や技術が変化するとその形式も最適ではなくなっていきます。だからその時代に合った最適な形式を提供することで、時代に合った人間活動を支える建築物、環境を作るという考え方ですね。その考えは建物の設計だけでなくもっと広く、建築に留まらず援用できる概念だと感じていました。
その後、設計事務所に入り、岩手県釜石市の3.11の復興事業に関わりました。災害によってなくなってしまった街を復興する事業です。建物を設計するだけでなく、人の生活、街の活動をつくる設計も加味しなければいけない事業でしたが、僕は建築のグループとして関わっていたので、建築以外の人々の生活、街づくりにはタッチできなかったんです。その時、建築のみを設計することに、学問の枠組みの限界や建築設計事務所という組織体の枠組みの限界を感じる瞬間がありました。そんな折に、久保田から声がかかり、これはいいチャンスかもしれないなと思いました。

「建材の情報」を最適化することで、業務を効率化する

どんな課題を解決するために、建材選定・管理サービス「truss」の事業を立ち上げたのでしょうか。

久保田:沖村を訪ねた後、そこで見たのが大量の建材のカタログでした。情報密度の高い数百ページのカタログが1000冊以上あった。これでは情報が多く、建材を選択する側に適切に伝わっていない可能性が高いと感じました。
膨大な建材の情報の中でも、建物用途や建設される場所等によって使える建材は法律の制限などがあり限られるので、ITのシステムで様々な条件で建材を絞り、ピックアップされた建材から選定できるシステムを作ればいいのでは?と閃きました。
設計者側としても情報がありすぎて選定が大変という課題も解決できるし、建材メーカー側も紙のカタログを作成する時間とコストを削減でき、winwinになると思ったんです。

沖村:僕の実務経験でも「建材の情報伝達」には時代に合っていない形式があると考えていました。いくら建材メーカーが良い製品をつくってもなかなか建材の決定権がある設計者に伝わっていない不健全な状況があると感じていました。理想は現時点の最新情報で関係するすべての建材メーカーの製品群を比較検討して最適な材料選定することですが、現実は古い紙カタログが残り容量も限られるカタログ棚から書式が異なるカタログをピックアップし見比べて選定します。どんなにベストを尽くしても理想はほど遠く限界があります。そんな状況は、ITが普及した現代において、まさしく「情報伝達の形式」が時代にあっていないと感じていました。
あと、設計をしながらも扱っている建材含め建物の金額がわからないことも実務上の問題でした。予算をオーバーすると設計の手戻りが生じます。設計を修正する手間、見積りをし直してもらう手間、相見積りの場合は複数の元請けとそれぞれの下請けの手間。修正して予算を収めるまでの時間は、お施主さんにとっては不動産に無駄にお金を支払うことになる場合もあります。そんな状況を、ITの力を借りて建材の情報を整理していくことで、解決することができるのではないかと考えています。

久保田:建築は建材の集合体で何十年も世の中に残るものなのに、自分が受けた大学の教育でも建材に対する教育はしっかりとなされていない状況があるな、と思っていました。そういった建材に対する意識の低さに違和感がありました。コストの掛け方などもそうですね。だからこそ世の中に何十年と残り続ける、「建材」をベースとした建築へのアプローチは意義があることだと考えました。そして日本の建築業界で、建材の情報を整理する事業に軸足を定め、長い時間をかけてコミットしようと立ち上げたのが「truss」というサービスです。

長い道のりの先にあるモノを見据えて、ITサービスを構築している自負がある

会社自体の描くビジョンや、強みなどを教えてください。

久保田:シンプルに人間がコニュニケーションをする部分はIT化しやすく、たくさんのプレイヤーが参入していきます。僕たちがやっている「建材の情報」をベースにした事業は土台の整備から行う必要があり、今まで挑戦する人がいなかった。大変なことの積み重ねをしているのですが、建築業界においてとても重要でインパクトがあることだと思っています。それに地道に正面から取り組んでいるところはうちの会社の魅力なんじゃないかな。時間はかかるけれども、整理されれば業界全体の効率化が進み、その先に「建物の価値高める」という目標にもたどり着ける可能性があると思っています。対処的な視点のITサービスの構築ではなく、長い道の先にできあがるモノを見据えて、現在のITサービスを構築している自負はありますね。
長期的な展望、ゴールについてはトラスに興味を持ってくれた人と直接会って話したいですね。

trussを通して、形式を作りたい

沖村:メーカー横断で検索比較ができるデータベースを持っていることはやはり強みだと思います。紙でもWEB版でもカタログ形式というのは建材メーカーごとに自社の製品を体系化し、各製品を良くみせつつ詳細な説明を伝えるためにまとめた資料ですが、先ほどの話であったように、たくさん集まると選定する側が比較検討しづらくなる現象が起きる。メーカー横断で建材を選定する視点にたつと最適化されていないからこそ起こっている課題ですね。
個々のカタログを活かしつつ「建材を選定する」ための形式をtrussによって作ることができたらいいなと思っています。

多様な業種が使える、建築のあらゆる側面を複合化したサービスを作りたい

採用募集の経緯は?

久保田:当社がサービスの軸にしている「建材」の情報は全てのステイクホルダーに関係する情報だと思っています。建築は設計や施工から発注者や役所など関わる職種が多いですが、「truss」はそういった多様な業種の人が使えるサービスにしていく必要があります。また、建材を軸に建築業務のいろいろな側面に繋がるサービスを目指しているので、設計、コンサル、オーナー等、色んな角度から経験者に参加してもらいたいです。現状、まだ足りない。もっと参加して欲しいと思っています。

どんな仕事を任せたいですか?

久保田:プロダクトをどう作っていくかの企画や、外部との折衝、大手設計事務所・ゼネコンへの営業、「truss」を使い始めた組織に向けてのカスタマーサクセスなど、任せられる仕事にも様々な可能性があると思っています。
関わり方は様々あると思いますが、やはり理想としては会社の中心になって長期間、自分事としてコミットしてくれる人が来てくれるととても嬉しいですね。
一方で、短期間でも「truss」に建築経験者ならではの視点を持って関わってくれる人もその都度貢献してもらえる関わり方があるので気軽に声をかけて欲しいと思っています。